MGデイ・コンクール・ウィナーになるための7つの方法
そうですか、あなたはMGデイでコンクール・ドゥ・エレガンスのウィナーになって、あの銀色のプラークが欲しいのですね。それではよろしければ私が良い方法を教えてあげましょうか?
え、そういうお前は誰、ですって?
いえいえ、名乗るほどの者じゃないですが、まあ聞くだけ損はしないと思いますよ。
最初の方法
まず車種はMGBを選ぶべきでしょうね。なぜって、MGFやRV8は新しすぎてまだコンクールの対象になってませんし、MGAやTシリーズ、まして戦前モデルは激戦区です。MGBと同じ年代のミジェットにしたって、アビンドン工場からライン・オフした時でさえここまではきれいではなかっただろう、というほどのコンディションを誇る車が1台や2台は必ずいますから。
それに比べてMGBはまだそうした「お約束」の車はありませんし、市場でのタマ数も豊富で値段もこなれている上に、部品の供給にも不安はありませんから、コンクール・コンディションの車を作り上げる素材としては絶好です。
第2の方法
一口にMGBと言っても、18年間もしつこく作っていた車ですから、その中身は時代と共に結構変化してますし、幾つかのモデルに分類できます。その中で最もコンクール・ウィナーに近いものと言えば、「より古いモデル」「より現存数の少ない、珍しいモデル」ということになります。一般論で言えばコンクール・ドゥ・エレガンスでは維持するのが困難な車ほど評価が高くなりますから。
古いということでは発売が開始された1962年製造の車が最も古いMGBということになりますが、珍しいということでは現存台数が世界で10台前後と言われる「MGBベルリネッタ」や、最終限定車の「MGB LEモデル」、MGB/GT V8カタログ・モデルの原型となった「コステロV8」などは今のところ日本では確認されていません。MGB/GT V8も日本では今のところ5台しか確認されてませんし、MGCも少なさではいい勝負です。
まあ古さや珍しさだけではウィナーになるには不十分なことも事実なんですがね。
第3の方法
まずは何を置いても「オリジナリティ」です。私が言うのは「市販当時の姿」という意味で、「オーナーの独自色」という意味じゃないですよ。
一言で言ってしまえばコンクール・ドゥ・エレガンスってのは、つまるところ「市販当時の姿を維持するための努力に対して報いる賞」なんですから。
でもそのためには、まずオリジナルの状態を知らないことには始まりません。特にMGBは18年間の間に実に大小様々な改良が加えられてますから、自分が持っている車の年式と、その年式の仕様を知らなければなりません。
それにはやっぱり書籍でしょうね。特に英国のBAY-VIEW
BOOKSから発行されている「ORIGINAL MGB」という本には、非常に詳細に渡って市販当時の仕様が書かれていますから、最良のテキストでしょう。
でも油断は禁物。コンクールの審査員は、この本にさえ書かれていないような細かい部品の事すら知っていると言う人達ですから。
第4の方法
さあ次はいよいよコンク−ルを目指してMGBを仕上げて行く作業です。大きく分ければ、壊れているところを直す「修理」、異なる年式の部品を正しい物に替える「交換」、痛んでいる部分に手を入れる「補修」の3つが必要です。
難しいのは「どこまでやるか」です。例えばボディカラーなども当然車の年式に合ったもので、さらにエンジン・ルームやトランク・ルームの中まで同じ色でなければなりません。全体はきれいに仕上がっていても、ここが違っているために入賞を逃す車も少なくはありません。
と言っても、きれいに仕上がっている方が評価が高いのは言うまでもないのですが、厄介な事に英国車の場合は「きれいすぎる」のも考えもので、あまりにピカピカなものよりは若干くすみがある位の方が「雰囲気がある」と言って評価されます。
このあたりの勘所というのは言葉では説明しにくいのですが、まあ実際のコンクール・ウィナーを見て感じてもらうしかないかも知れませんね。
第5の方法
さてこうして車の準備ができました。いよいよ待ちに待ったMGデイです。7月〜9月に発売されるカーグラフィック誌やカーマガジン誌での開催告知をチェックして、主催であるMGカークラブ・ジャパンセンターに参加を申し込みましょう。
そしていよいよMGデイ当日、自慢のMGBを持って勇躍軽井沢に乗り込みましょう。しかしはやる心を抑えて受付開始の1時間程前には軽井沢に到着するようにして、会場に入る前に近くのガソリン・スタンドなどで洗車をしましょう。審査員も人の子、同じ程度の車があれば見栄えの良い方に点を与えるものです。
その時ボディの汚れをきれいにするのはもちろん、グリルやバンパーやサイド・モールなどのメッキ・パーツ、装着されていればワイヤ・ホイールのスポークに至るまで、すっかりきれいにしましょう。コンクールの審査ではエンジン・ルームも見られますから、ここがきれいにされているとかなり印象が高くなります。
第6の方法
芝生の上に車を並べ、さあこれからコンクールです。
ところが実は審査はすでに始まっています。それというのもMGBは参加台数が多く、審査員も与えられた時間だけでは到底すべての車をじっくり見ることはできません。と言う訳で、彼等はあらかじめ目星を付けた車にそれとなく近づき、世間話を装ってオーナーから色々な情報を仕入れるのです。
と言っても果たして誰が審査員やら、最初は区別が付かないでしょう。ですから油断は禁物。近づいてくる人には愛想良く、それでいて自慢するところは思いっきり自慢しましょう。そのためにこそ、あなたはここにいるのですから。
これはもちろん本当の審査の時も一緒です。コンクールにおいては「沈黙は美徳」などということはありえないのです。車を仕上げる過程を写真に撮って、それを掲示しておくなどというのも効果的なアピール方法です。
そうそう、審査は1台15分程度で順番に行われますが、肝心の自分の番が来た時に食事などで車の傍から離れているなどというのは論外ですからね。この日のために苦労してきたのに、肝心の審査の場にいなかったために充分なアピールができなかったのでは何のための苦労だったのか分かりゃしません。
第7の方法
そうそう、一つだけ言い忘れてました。
MGデイの規定では、コンクール入賞の条件として「原則的に3年以上の所有歴」を求められています。これはコンクールに入賞したいがためだけに、財力にものを言わせて程度極上の車を入手して参加するという行為を排除するためです。そうじゃないと、結局金持ちの勝ちになってしまいますからね。
例えお金がなくてもショップに依頼するところを自分でやるとかで補うことはできます。むしろそれこそがコンクールの精神である「市販当時の姿を維持するための努力」ですから。それも審査員にアピールするべきポイントです。
さあ今私が述べてきた事柄を全て実践できたなら、あなたがMGB部門のコンクール・ウィナーに選ばれることは間違いありません。
簡単でしょう?