<THE LIMITED MGBs>
「限定」「プレミアム」「リミティッド」という言葉の響きに反応する顧客というのは、別に昨今生まれたものではない。
実はMGBにも18年間のモデル・ライフの中で、数種類の「限定車」というものが存在していた。
1.MG50周年記念限定車(通称「ジュビリー・モデル」)
1975年
MGB/GT(UB1)ベースで751台制作。イギリス国内でのみ750台販売(1台はプロモーション中に破損)。
本来は1925年からの「MG50周年記念」とされているが、現在ではMG1号車の誕生は1924年というのが定説であり、1925年はアビンドン工場開設(または「オールドNo.1」の完成)の年である。
モデル別にレジスター(分科会)組織に別れている本国MGカークラブには、このモデルのレジスターもある。また日本にも並行輸入で1台が存在していることが確認されている(ただし、ノーマルのB/GTの外観に変更されてしまっている)。
なおこのクルマとほぼ同一仕様と思われるトゥアラーとGT V8(およびMGミジェット1500)が各1台だけ製作された。前者(G−HN5
UG 388950G ※北米仕様?)は1975年10月にアビンドン工場100万台目のクルマとして作られ、ニュウ・イングランドのMGカークラブTシリーズ・レジスター会員の手に渡った。
一方後者(G−D2D1 2605G)は1975年6月に生産され、英国自動車学校が高速走行体験用として購入したという。
<限定仕様>
専用ボディカラー(ブリティッシュ・グリーン・メタリック)
専用ストライプ(ジュビリー・マーク入りのゴールド・ライン)
専用テールゲート・エンブレム(クローム部分がゴールド)
専用アルミホイール(GT V8用のシルバー部分をゴールドに変えた物)
通し番号付き限定車インパネ・プラーク
ブラックスポーク・ステアリングホイール
なお限定車扱いではないものの、この年1年間に限りMGBおよびMGミジェットは言わば「ジュビリー年間」ということなのか、ボディ前後およびステアリングホイール中央のオクタゴンが金色となり、また対米仕様MGBはジュビリー・モデルと同じエンブレムが右端に組み込まれたインストゥルメントパネルが与えられているようである。
しかしこのインパネの事はアメリカMOSSモータースのMGBパーツ・カタログにも掲載されていないし、この事が記載されている書籍もないと言って良い。
2.MGB最終限定車(通称「LEモデル」)
1979〜1980年
MGBの生産終了(およびアビンドン工場閉鎖)を記念して生産/販売されたが、イギリス国内向けにトゥアラー421台/GT580台の合計1000台生産されたものと、トゥアラーのボディカラーを黒にしたアメリカ市場向けの3種類が存在する。
アメリカ市場向けの生産開始はイギリス仕様よりも早く、その生産台数は総数6682台に及んだ。 実のところLEモデルとは、このアメリカ仕様の本国版にすぎないと言っても良い。
<限定仕様>
(1)イギリス仕様:1980(発売は1981)
専用ボディカラー(トゥアラー/ゴールド、GT/シルバー)
サイドシル・ストライプ(同一デザインの色違い)
フロント・スポイラー
赤地MGオクタゴン・グリル/ステアリングセンターマーク
アルミ・ホイールまたはワイヤホイール(トゥアラー208台のみ)
(2)アメリカ仕様:1979〜1980
※写真は「カー・アンド・ドライバー日本版」誌1988年5月10日号掲載時のもの
専用ボディカラー(ブラック)
サイドシル・ストライプ(英国仕様GTと同一)
フロント・スポイラー
アルミ・ホイール
小径ステアリングホイール
トランク・キャリア
限定車インパネ・プラーク
3.MGB最終限定車日本仕様 1980年
前述の3台以外にディーラー独自限定車として日本で設定されたのが、日英自動車の最終限定車100台である。
これはBLより出荷されたMGBを日本においてボディカラーをブラックに塗装、独自デザインのサイドシル・ストライプ(貼らずに顧客に渡した例もあるらしい)、そして前述の対米仕様限定車用デザインを基に西端日出男氏がプロデュースして制作した限定車プラークを付けたものである。
この黒い限定車はミジェット1500にも設定され、こちらはフォートラン製メッシュ・デザインのアルミ・ホイールも装着されていた。
ただしこのどちらも実際に発売された台数が100台なのかどうかは不明である。
<限定仕様>
専用ボディカラー(ブラック)
サイドシル・ストライプ(日英自動車オリジナル・デザイン)
限定車インパネ・プラーク